Pithecanthropus Erectus

読んだ本などの感想を書いてます。

松尾潔『松尾潔のメロウな季節』

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先日の連休にbayfmで放送されていた特番『松尾潔のメロウな休日』を聴いていて、私はとても驚いたことがある。

松尾潔さんのキャラクターが、NHK-FMのご自身の冠番組松尾潔のメロウな夜』とだいぶ違っているのだ。

 

R&B愛好家としての非常に抑制の利いた「大人な語り」が『松尾潔のメロウな夜』だとしたら、こないだの『松尾潔のメロウな休日』は、その抑制というか拘束から解き放たれ、軽妙洒脱で当意即妙、自由闊達にしゃべりまくる、まさに「人気のラジオDJ」といった感じだった。お茶目であり、ひょうきんだった。

 

少し前にNHKラジオ第1の『高橋源一郎飛ぶ教室』に松尾潔さんが出演していて、その時も私は、「思っていたよりも、だいぶ茶目っ気のある人なんだな」と松尾さんに対しての認識を新たにしたものだが、『松尾潔のメロウな休日』は、茶目っ気なんて生易しい言葉では足りないくらい、笑いに対しての貪欲さみたいなものすら感じられる、楽しい番組だった。恒例化してほしい。

 

松尾潔のメロウな季節』は『松尾潔のメロウな日々』の続編として書かれた本だと思う。文章の松尾潔さんも、またちょっとキャラクターが違って、静かでひたむきである。NHK-FMの『松尾潔のメロウな夜』に近いけど、文章でしか味わえない静かさがある。美しさといっても良いかもしれない。美文、多いです。

本書のハイライト、と私が勝手に思っている、第1部の「06 ブラッドライン」と題された章。その中でも特に、「そしてとうとうエヴァンスからの反応がないままひと月がたった。」から続くくだりは、悲しくて美しくて、鮮やかだと思う。ウェブ連載時(2013年9月から12月)にも私はこの文章をガラケーで読んでいて、やたら感動して印象に残っていて、時折思い返したりしていた。今回、改めて本で読んでみて、やっぱり良いなー、美メロだなーと思った次第。

 

第2部で紹介されているCD、聴いたことないものばかりだった。

まずは『Mo' Money』のサントラから探してみよう!