エヴェリン・マクドネル『ビョークが行く』栩木玲子訳
それでもステージであれほどナーヴァスになっている彼女を見て、私は彼女のチックとこぼれたコーヒーを思い出していた。勇敢な変人でいることの難しさ、自分で見つけた美しい衣装を着て行ったら、みんなに笑われた、そのときの当惑や哀しみを私は知っている。だからビョーク、白鳥がいっしょにいてくれてよかったね。(p.132)
著者のエヴェリン・マクドネルさんはビョークに二度、インタビューを行っている。
1997年と2001年に行われたそれらのインタビューは、本書の始まりと終わりの位置にある。
そしてその二つのインタビューに挟まれるようにして、たくさんのビョークの言葉が引用されている。各メディアでビョーク自身が語った言葉である。
まるでコラージュ画のようにぺたぺたと貼りつけられまくる言葉。それらを取捨選択しているのは著者のエヴェリンさんなわけだが、物凄く透徹で公平な感じが伝わってきて、気持ちいい。いやらしい感じがまったくない。
おそらく本書のハイライトは、映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の作品と騒動にまつわる、エヴェリンさんの考察にあると思う。
冷静に分析しながら、しかし情熱的で愛に溢れた考察!
私はとても胸を打たれたし、もう一度映画を観ようとも思ったし、そしてその後ふたたび、エヴェリンさんの文章を読んでみようと思った。
もちろんCDは聴きまくっている。