Pithecanthropus Erectus

読んだ本などの感想を書いてます。

モーリス・ルブラン『813』堀口大學訳

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「(前略)ジュヌビエーブの良心は潔白で最高のものです……それなのにあなたときたら……」

「わしの良心がどうだというのだ?」

「あなたときたら、心の正しい人ではない」

(p.139)

 

ホテルの一室で事件が起こる。

「ダイヤモンド王」と呼ばれる大富豪・ケッセルバックが殺された。

死体の上には「アルセーヌ・ルパン」と書かれた血まみれのカードがピンで止めてあり…。

 

この殺人事件の捜査にあたるのはルノルマンという超やり手の保安課長である。

ルノルマンは即座に、この事件はルパンの手によるものではないと看破し、真犯人を追う。

ルパンもまた、真犯人の逮捕に協力するよーみたいな公開状を新聞に送り付けつつ、その一方で、逮捕されてしまった自分の手下の脱獄を予告した上で成功させたりもしている。

その手口の鮮やかさといったらなく、やっぱりルパンすごいなーと私は思った。

そして、こんな手際よい感じで、事件はすぐに解決するんじゃないかなとも思った。

 

ところがことはそう簡単には運ばない。

というか、捜査はかなり難航し、真犯人に辿り着くどころか、ルノルマンもルパンもむしろ次第に追い詰められていく。

 

ケッセルバックは生前、なにやら重大な計画を水面下で進めていたらしい。

たぶんだけど、国家転覆的なやばいやつだと私は推測している。

しかしその計画の本当のところは何なのか、ルノルマンもルパンも掴めていない。

おそらくその計画の真相が明るみになったとき、真犯人の名もまた明らかになるのだろう。

事件の謎の核心部分にその計画が存在しているのは間違いないのだから。

 

いくつもの「まじっすか」という展開に翻弄されつつ、ケッセルバック計画の真相も、「813」という数字が持つ意味も謎のまま、ルパンは捕らえられ、本書は終わりを告げる。

 

ところでルパンの行動原理にはつねに、今で言うところの「映(ば)えるか、映えないか」が存在している気がする。

常に「国民の目」を意識して「映える」行動を選び、そして炎上商法的に警察と社会を挑発して世の中を沸騰させる感じ。

そんなやり手のインフルエンサーが窮地に立たされて、さあどうなる、って感じです。

つづきは『続813』で…。

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息子もルパンを読んだことがあるので、ルパンっぽいミニフィグをお願いしたら作ってくれた!