Pithecanthropus Erectus

読んだ本などの感想を書いてます。

2023-12-01から1ヶ月間の記事一覧

やなせたかし『ふしぎな絵本 十二の真珠』

どこにでも死闘はある 小川の流れの中にも ツルバラの茂みにも タンポポの葉の下にも なにかが生きて なにかが死んでいる (p.52-53「チリンの鈴」より) この本に収められている十二の短編、そのほぼ全てが、悲しい、強烈に。 なぜこんなに悲しいのかという…

渡辺浩弐『2030年のゲーム・キッズ』

私はいろいろなことを忘れていく。 けれども、問題はない。 思い出すことはできるのだから。 そんなふうに、私は機械に変換されていった。(p.197-198) 現在、不惑の私が、高校生だった頃、つまり前回のミレニアム前後のことだが、「当時の大人たち」は盛んに…

フアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』杉山晃、増田義郎訳

無数の星がきらめく黒い空。そして月のそばには、いちばん大きな星。(p.95) アブンディオという名のロバ追いの男が登場する。生者も死者も分け隔てなくしゃべりまくるこの小説内において、耳の遠い彼には特別な役割が与えられている。哀れな狂言回し。彼に与…

國分功一郎『はじめてのスピノザ 自由へのエチカ』

ですから、どうすれば自らの力がうまく表現される行為を作り出せるのかが、自由であるために一番大切なことになります。(p.110) 面白くて三回、読んだ。どういうところが面白かったかというと、まず、読みやすいということ。 そして、読みやすいけれど、既成…

千葉雅也 二村ヒトシ 柴田英里『欲望会議 性とポリコレの哲学』

二村 なぜ、境界線を引いて敵と味方をはっきりと分けたいんだろう。 千葉 それは、柴田さん的に言えば、気持ちいいからでしょう。 柴田 はい。「敵」の存在は、コミュニティの結束を高めますからね。そこには共感の快楽があります。 (p.104-105) この本を読…