Pithecanthropus Erectus

読んだ本などの感想を書いてます。

千葉雅也 二村ヒトシ 柴田英里『欲望会議 性とポリコレの哲学』

二村 なぜ、境界線を引いて敵と味方をはっきりと分けたいんだろう。

千葉 それは、柴田さん的に言えば、気持ちいいからでしょう。

柴田 はい。「敵」の存在は、コミュニティの結束を高めますからね。そこには共感の快楽があります。

(p.104-105)

 

 この本を読んで、俺は自分の欲望にきちんと向き合ってきただろうか、と私は思いました。なにお高くとまっていやがる、お前はお前の体に付属してる卑小なデバイスと向き合う日々だったではないか、それなのによくもまあそんなカマトトぶれますね、と思わなくもないが、でも、二村ヒトシさんの「(前略)ポルノとホラーはつながっているように感じます。(p.28)」という発言を読んだとき、私はとても衝撃を受けました。うわ本当だ! と叫びたくなった。さも自分の発見のようにして友達に言いふらしたくなった。そして、自分は欲望に向き合ってこなかった、と思った。

 私は怖い話が大好きで、しかも「こういうのが好き」という明確な好みがある。それは、「うわーお化けだー!」とか「祟りじゃー!」とか「霊障だー!」とか「逃げろー!」みたいなものではなくて、ではどういうのかというと、それは、言わぬが花でしょう。それらのホラーの趣味嗜好を、ポルノにパラレルに置き換えたときに私は、滋味深い感動を覚えた。

 

 あと、この本を読んでいて、『風姿花伝』のことを思った。『風姿花伝』における花とは、すこやかな発情&オーガズムのことなのではないか。つまり、世阿弥は欲望の達人だったのだ。秘すれば花なり。わかります。