Pithecanthropus Erectus

読んだ本などの感想を書いてます。

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

筒井康隆『脱走と追跡のサンバ』

原子時計研究室では、研究員らしい三人の男とひとりの女が餅搗(つ)きをしていた。 「やあ、どうもどうも。なにね、郷里へ帰っている教授から餅米を送ってきたもので、今、搗いてるんですよ」おれの名刺にちらと視線を走らせた若い男が、陽気にそう言いながら…

松浦理英子『風鈴』

いまは大人になった「わたし(アオイ)」が物語る、子供の頃の話。 それは忘れられないひと夏のまばゆい体験、と思いきや、である。 終盤、物語は急速に陰りを見せ、瞬く間に真っ暗闇の穴に落ちて、穴の底から地上を見上げるところで幕となる。 主要な登場人…