トーベ・ヤンソン
ホムサ・トフトには、まるっきり今までとちがったママが見えて、それがいかにもママらしく、自然に思えました。ホムサはふと、ママはなぜかなしくなったのだろう、どうしたらなぐさめてあげられるのだろうと思いました。(p.258) 1. 昨年、初めて読んだ『ムー…
「わたしはいつだって海が好きだったよ。うちはみんな、海が好きだろ。だからこそ、ここに来たんじゃないかね」(p.269) ムーミン一家が、灯台のある島で暮らし始める。『ムーミンパパ海へ行く』とはそういう物語なのだけれど、でも、なぜ彼らは、住み慣れた…
ふと、自分の青ざめた鼻が鏡のかけらにうつっているのを、フィリフヨンカはちらと見たのです。そして思わず窓のところまで走っていくと、外へ飛び出しました。 (p.78「この世のおわりにおびえるフィリフヨンカ」より) ムーミン小説の中で唯一の短篇集が本作…
トゥーティッキは、肩をすくめました。 「どんなことでも、自分で見つけださなきゃいけないものよ。そうして自分ひとりで、それを乗りこえるんだわ」 お日さまは、いよいよ燃えるように輝きはじめました。(p.170) ムーミンたちは冬眠をする。十一月から四月…
ミーサは赤いベルベットのドレスを着て、舞台の上をしずしずと進みました。しばらくの間、両手を目の上にあててじっと立ったまま、プリマドンナになるとどんな気持ちがするものか、味わいました。それは、すばらしいものでした。(p.165-166) 彼女の名前はミ…
わたしはたのしくてたまらず、この時間がすぎていってしまわないかと心配する気持ちさえ起きませんでした。 「たのしんでる?」 わたしは聞きました。 「たのしんでるさ」 フレドリクソンは口の中でいって、とてもはずかしそうな顔をしました。(p.106) 上記…
「ねえ、スナフキン。ぼくがパパにもママにも話せないひみつを持ったのは、これが初めてなんだ」 ムーミントロールは、真剣な顔でいいました。 それからスナフキンがぼうしを抱えて、ふたりは川ぞいを歩きだしました。(p.60) 前作(『ムーミン谷の彗星』)が…
岩山全体がぐらぐらゆれて、あたり一面がふるえ、彗星が恐怖のさけび声をあげました。それとも、悲鳴をあげたのは地球のほうだったのでしょうか。(p.208) ムーミン小説の第一作目(『小さなトロールと大きな洪水』はとりあえず置いておいて)の『ムーミン谷…
とにかく、これはわたしがはじめて書いた、ハッピーエンドのお話なのです!(「序文」より) ムーミン小説の第一作目にあたる『小さなトロールと大きな洪水』はきらめきにみちている。ちょっぴり不気味で、だいぶ不思議な物語空間を、ムーミントロールとママ…
ムーミン小説を読み進めていくうちに、私は次第に、 こんな面白い小説を書くトーベ・ヤンソンとはどんな人なのだろうか、 と思うようになっていた。 各作品、比類なく独創的であり、かつ、毎回ちがった面白さがある。 シリーズを重ねていながら、それぞれの…
(大きくなりすぎちゃったんだ) と、ホムサは思いました。 (あんまり大きくなりすぎて、ひとりでうまくやっていくことができないんだ)(p.216) 目次 ■さようなら、ムーミン谷 ■雨音に誘われて ■ムーミナイズされる屈託 ■森を抜けるホムサ ■鏡、そしてガラ…
パパは地面を見つめて立ちつくしました。しかめた鼻づらは、しわだらけでした。それからきゅうにからだをのばすと、はればれとした顔になっていいました。 「じゃあ、わしは理解する必要がないぞ! 海ってやつは、すこしたちがわるいよ」(p.280) 理解されな…
「いけない。ぼくはいったいどうなるんだ? ぼくはニョロニョロじゃない、ムーミンパパなんだ。……なにをこんなところでしているんだ?」(p.224) 昔はもっと色んなことにくよくよしていた気がする。 それは臆病だったからでもあるし、おそらく繊細でもあった…
悪気なく明るい、そういう人が世の中に一定数は存在している。 暴力的にほがらかで、情け容赦なく親切で、うんざりするほど優しい人たち。 彼らにうしろめたさを抱くようなナイーブな時期もかつての私にはあったが、きっと、ムーミントロールがヘムレンさん…
「あたい、もう、またねむくなっちゃったわ。いつも、ポケットの中が、いちばんよくねむれるの」 「そうかい。たいせつなのは、じぶんのしたいことを、じぶんで知ってるってことだよ」 スナフキンは、そういって、ちびのミイをポケットの中へいれてやりまし…
あのころは、世界はとっても大きくて、小さなものは、いまよりもっとかわいらしく、小さかったのです。わたしはそのほうがよっぽどすきです。わたしのいう意味がわかりますか。(p.117) このように、ムーミンパパはしばしば、読者に語りかける。 ここで想定さ…
「ねえ、スナフキン。ぼくらがパパにもママにも話せないひみつをもったのは、これがはじめてだねえ」 と、ムーミントロールはしんけんな顔でいいました。 (p.75) 「はじめに」と題された短い文章で、ムーミントロールたちが冬眠に入る日のことが描かれている…
「ぼく、スニフをさがしにいかなくちゃ。まにあうように、とけいをかしてね」 「いけない。この人を外へやらないで!」 と、スノークのおじょうさんはさけびましたが、ムーミンママはいいました。 「これは、しなくちゃならないことよ。いそいで、できるだけ…