Pithecanthropus Erectus

読んだ本などの感想を書いてます。

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

トーベ・ヤンソン『ムーミン谷の彗星』下村隆一訳、翻訳編集:畑中麻紀

岩山全体がぐらぐらゆれて、あたり一面がふるえ、彗星が恐怖のさけび声をあげました。それとも、悲鳴をあげたのは地球のほうだったのでしょうか。(p.208) ムーミン小説の第一作目(『小さなトロールと大きな洪水』はとりあえず置いておいて)の『ムーミン谷…

村上春樹『村上朝日堂 はいほー!』

その昔、私が犬と暮らしていたころ。 犬との散歩コースにある電柱に、看板が取り付けられていて、そこには、「お父さんお母さんに 言えないことは悪いこと」という標語が書かれていた。 それを見るたびに私は嫌な気持ちになっていた。ごく控えめに言って、く…

太田静子『斜陽日記』

「でも、今日の夕方は、とても、うつくしい夕焼だったわ。夕焼は、明日いいお天気になるという証拠でしょう? きっと、お天気になりますわ。(後略)」 「相模曾我日記」と題して太田静子さんが付けていた日記帳は、彼女自身の手によって太宰治に渡され、太…

太宰治『斜陽』

上原さんは、ふふ、とお笑いになって、 「でも、もう、おそいなあ。黄昏だ」 「朝ですわ」 弟の直治は、その朝に自殺していた。(『斜陽』p.181) 『斜陽』はこれまで何度も読み返してきた作品だが、その『斜陽』のサンプリング元として知られる太田静子さんの…