阿部和重
「もちろんほんものではないし、わたしはほんものなど見たこともないが、しかしこれがほんものだと言われたらあっさり信じてしまうだろう。それほどのものだ」 (p.12 「Hunters And Collectors」より) 阿部和重さんの小説を読んでいると、私はいつも、ディズ…
「それとあの――」 小首をかしげて「なんですか?」と訊いてきたハナコに対し、横口健二はこう伝えた。 「いつかまた、かならず会いましょう」 するとハナコは一拍おいてから、このように応じた。 「はい、かならずまた会いましょう」 この約束を果たせる見こ…
謝罪しなければと思うが、その直後に出たのは別の言葉だった。 「ラリーさん」 「なんです?」 「ありがとう」 (p.340より) ラリーさん、とは阿部和重(この小説の主人公)の家にとつぜん(血まみれで瀕死の状態で)やって来たアメリカ人のことである。そし…