ジュール=ベルヌ『十五少年漂流記』那須辰造訳
「だからね、ゴードン、ぼくは大統領をやめて、きみかドニファンにかわってもらいたいんだ。そうしたら、きっと平和がたもたれると思うんだ。」
「それはいけないよ。きみはみんなに選挙されたんだから、かってにやめることはできないよ。」
「そうか。じゃ、ぼくはできるかぎり力をつくすよ」(p.236)
様々な年齢の少年たち15人と、1匹の犬が、無人島に漂着し、協力しながらのサバイバル生活が始まる。
子供たちだけで大丈夫? と思ってしまう。
最年少は8歳、最年長が14歳。
夏は暖かいけれど、冬には零下30度にもなるような厳しい土地だ。
しかし彼らは知恵と勇気と無邪気さを武器に、仲間割れをしつつも、生き延びて脱出するという目的のために、力を合わせて無人島での日々を送る。がんばれーと応援しながら読んだ。面白い。
物語の途中で、リーダー=大統領を選ぼう、ということになり、初代の大統領は一番年上で思慮深いゴードンが選挙を経ずに選ばれる。任期は一年。
それで、ゴードンの任期満了に伴い、二代目の大統領が選挙で選ばれることになった。
厳正な選挙が行われたのだけど、15人の少年のうちの1人のモコには「黒人だから選挙権がなかった」と当然のように書いてあり、ほんとにひどい時代だったのだなと思った。
モコは間違いなくこの物語のMVPである。
彼がいなかったら、「十四少年」は二年も持たなかったことだろう。
子供たちならその無邪気さでもってモコをもっと讃えてくれたっていいようなものだ。肌の色にかかわらずね。
ところでデフォーの『ロビンソン・クルーソー』でもそうだったのだが、『十五少年漂流記』にも、亀をつかまえて食うシーンがある。
で、ロビンソンも十五少年も、亀をすごく美味そうに食べている。
影響を受けやすい私は、ここのところずっと亀を食べたくてしょうがない。
ネットで調べても近くに亀料理の店はなさそうなので、困っているところだ…。