2025-01-01から1年間の記事一覧
中谷美紀、坂本龍一、売野雅勇。この三者の名前がクレジットされている楽曲群には何か共通する世界観のようなものが感じられて、私はそれに強烈に惹かれていた。最高だなあ、素敵だなあ、この横溢する魔力の源泉はなんなんだろうなあ、と思いながら、もう三…
酒を飲まない(飲めない)ので、酒に関する興味・関心も特になく、だからなのだろうけれども、人々が酒を飲むために集う空間における作法というか、適切なふるまいがわからなくて、本やインターネットなどで調べて酒席マナーを身につけなければならなかった…
「私」の祖母が、祖父の亡くなった日の夜のできごとについて、幼い「私」の手を握りながら語る場面から、この本は始まる。 冷たくなった祖父の体に祖母が行った何やら儀式めいたふるまいによって、「祖母は、祖父が死んでしまったことよりも、自分がどうしよ…
坂上田村麻呂という人が征夷大将軍だった、と昔、学校で習ったのは覚えている。征夷大将軍というポストは、当時、蝦夷を討伐するときのボスみたいなものだった、というのも覚えている。蝦夷、と呼ばれる人たちが、当時、東北地方あたりに住んでいた、という…
萩原朔太郎の「猫町」の冒頭に、ショウペンハウエルという、おそらく昔のすごい偉い人、の言葉が引用されている。それは次のようなものである。 蝿を叩きつぶしたところで、 蝿の「物そのもの」は死には しない。単に蝿の現象をつぶ したばかりだ。 ちょっと…
勤勉であることしか取り柄がない人、などと、まるで勤勉がやくたいも無い瑣末なことのように言いやがる俗人が巷間にはうようよとうごめいていてかまびすしいが、馬鹿野郎、勤勉こそたいせつだよ。だいじ、だいじ。だから、勤勉の人を悪く言ってはいけないよ…
主人公であり語り手でもある薫君は、麦わら帽子に昆虫網に付け髭という奇異ないでたちで真夏の空の下に突っ立っていて、その場面からこの物語は始まる。これまでの三作は毎回、家の中から始まっていたのだから、おお、なんか新鮮、と思う。 というかこの作品…
本作においても語り手である薫君のおしゃべりは絶好調であり、のりにのっている。しかし前二作と違うなあと私がなんとなく感じたのは、薫君以外のキャラもしゃべりまくっているということだ。薫君も相変わらずしゃべるのだが、他の人たちもとにかくしゃべる…
先日、『赤頭巾ちゃん気をつけて』を読んだ時に私は、語り手の薫君がおしゃべりすぎることについて、「戦略的にそのようなキャラを演じているのでは」と思ったのだけれども、続編となるこの『さよなら快傑黒頭巾』を読んで、このおしゃべりは演技ではできな…
この小説の主人公で語り手でもある薫君は、とにかくしゃべる。いや語り手なんだからしゃべるのは当然なのだけれど、それにしたって、しゃべりすぎじゃない? って思うくらい、薫君、しゃべってしゃべってしゃべりまくる。 幼馴染の由美の要配慮個人情報なん…
われもさあらむと思はざりしにもあらざりき。いまはたしかにそれよと疑はずなりて、のたまふままに頷きつ。あたりのめづらしければ起きむとする夜着の肩、ながく柔かにおさへたまへり。(p.23) みたいな文章を、素養がないものだから私は、すらすらと読むこ…
快刀乱麻を断つ、ということわざがある。これはgoo辞書によれば、「よく切れる刀で、もつれた麻を切る。もつれた事柄を、もののみごとに処理することのたとえ。」というポジティブな意味らしいけれど、もつれた麻をバッサリ切るのではなくて、根気強くほどく…
四十年以上生きてきて、それなりに色んな昔話に触れてきたけれども、「そういえば、おじいさんおばあさんが主役の昔話って多いなあ」と考えたことは無かった。なんか普通にそういうもんだと思っていた。 だからこの本のタイトルはけっこう衝撃的だった。え、…
今年の大河ドラマ『べらぼう』の第一話で、ナレーションの綾瀬はるか演じるキツネが劇中に登場してカメラに向かって語りかけ、スマートフォンの地図アプリを使って視聴者に距離感を説明するというくだりに私は、物凄く感動した。素晴らしすぎると思った。町…