Pithecanthropus Erectus

読んだ本などの感想を書いてます。

2023年10月24日_町田康_高円寺JIROKICH

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 冒頭、町田康さんは、おおよそ次のようなことを語る。

 

 綸言汗の如し(りんげんあせのごとし)という言葉がある。これは、天子(偉い人)の言葉は、取り消しできないという意味である。なぜ、天子のような偉い人の言葉を、汗という汚いものに例えるのか、昔から疑問だった。

 先日、徳間ジャパンのインタビューで、歌手はもう引退すると語った。しかし、『ミュージック・マガジン』で始まった連載で、むかし聴いていた歌のことを書いたり、某ミュージシャンと対談したりするうちに、歌いたくなってきた。車を運転しているときについ歌ってしまったりする。歌うことが生き癖(もっと絶妙な言葉を使われていたと思います。生来の習慣みたいな、そういう意味の言葉です)になっている。

 だがしかし。

 綸言汗の如し。自分は天子ではないが、言ったことを取り消すわけにもいかないので、今日は、歌わない。歌うのはやめた。その代わり、「抑揚のついた詩の朗読」をしようと思う。

 

 そしてこのあたりで、noteに上げている歌詞について触れたはず。noteに、今日、朗読する順番に歌詞が載っているとして、そのnoteのページQRコードがどでかく印刷された紙(しっかりとラミネート加工されていたように思う)をステージ上で掲げる町田康さん。歌詞を見ながら聴いてほしいとのこと。カメラを向けてQRコードを読み取ったら、ちゃんと繋がった。

 

 「汝、我が民に非ズ」は、公表はしていないが昨年の春(たしか)に解散している。経緯についてはここで話すと長くなるので、いずれどこかで書くかもしれない。

 

 と、こんな感じのことを語っていた。

 

 そして一曲目、「もうやめてください」。これは、「もうやめてください」と言うのをやめてください、という歌、みたいな説明があった。

 ほぼ毎回、歌詞についての簡単な話があった。それがまた面白く、ギターの中村JIZO敬治さんとのやり取りも軽妙で、笑いが起きまくりだった。

 また、発見もあった。「踊り狂う君ダウン花を抱いて儲けなしでターン」の十字架のくだりとか、これまで私には謎で、言葉の響きだけを楽しんでいたのだが、町田康さんのお話を聞いて、そういう意味があったのか、うわ、ほんとだ、と驚いたりした。うわわ、と。

 

 終盤、町田康さんは、夢、について語る。おおよそ次のようなことです。

 

 自分は今まで、夢というものを持たずに、現実だけを見て生きてきた。しかし、夢を持つことも大事だと思うので、夢を持った。それは、町田地蔵尊町田康さん+中村JIZO敬治さんの新ユニット名だと思う)のライブや物販でお金を稼いで、そのお金で、地蔵堂を建立するというものだ。

 その地蔵堂では、子供たちに作文を教える教室を開いたり、こういうライブをやったりすることができる。そういう地蔵堂を建立したい。それが夢。立地は、山奥とか離島じゃなくて、行きやすいところがいい。

 

 と、こんな感じのことを語っていた。

 楽しそうな夢!

 その地蔵堂を見てみたいし、その地蔵堂に足繫く通いたい!

 

 最後の曲は「名前の歌」。『Machida Kou Group Live 2004 Oct 6th』バージョンの「名前の歌」を二十年近く聴いてきた身としては、ここに自分の名前が登場したことの感慨たるやひとしおです。涙。

 

 二時間にわたる濃密な、歌、というか、抑揚のついた詩の朗読に、私は完全にうつつを忘れて、いまもちょっとまだ、うつつを忘れている。いまだ興奮の中にいる。会場の盛り上がりとか一体感みたいなものも凄くて、ライブっていいなーと帰り道、思った。