Pithecanthropus Erectus

読んだ本などの感想を書いてます。

松尾潔『おれの歌を止めるな』

 私が愛聴していたラジオ番組『松尾潔のメロウな夜』が終了してもうすぐ二ヶ月。松尾さんの「新譜がたまっています」が好きだったのだけれど、そのフレーズは今年に入ってから一度も聞かれないまま、番組は三月に終了した。感動の最終回だった。でも、悲しかったな。どうして終わっちゃったんだろう。なんかあったんだろうな、と下衆の勘繰りをしたくもなる。番組では昨年度から、五週目のリクエスト特集がなくなり、代わりに、ノンストップミックスが放送されるようになった。これも、なんかあったのではと下衆の勘繰り。ノンストップミックスは、リスナーを心配させないために松尾さんとスタッフが編み出した策だったのではないか、なんてね。

 私は本書には本、映画、音楽、芸術、ジャニーズ、それらに関する文章が収められている。当たり前のことを、当たり前に語ることが、当たり前ではなくなってしまっているこの時世に、松尾さんは、声を荒げることなく、あくまで当たり前のトーンで語る。これってかなり難易度が高そうである。しなやかな文章は強靭な胆力によって支えられているのだろうと思う。

 

 Let’s talk about it to be about it.

 理想を語れ、理想の自分になるために。

 口をふさぐものは要らない。おれの歌を止めるな。(p.33)