Pithecanthropus Erectus

読んだ本などの感想を書いてます。

ペーテル・エクベリ『自分で考えよう 世界を知るための哲学入門』を読んで

ペーテル・エクベリ『自分で考えよう 世界を知るための哲学入門』

 絵:スヴェン・ノードクヴィスト

 訳:枇谷玲子

 

今が便利な世の中かなのかどうかって考えてみると、そりゃあ便利な世の中でしょうと思う。パソコンとかスマートフォンとか、エアコンとか自動車とか。予防接種をすればある種の病気は防げるし。テレビ番組の録画とか超簡単だし。Spotifyがあれば聴きたい音楽について困ることもそんなにないだろうし(無料版しか使ってないけど)。コンビニはたくさんあるし。ワークマンは朝早くから夜遅くまで空いているし。

便利ですよ。超便利。

じゃあなんでこんなに生きづらいんだろうか。

 

生きやすさと便利さはイコールではない、ということを実は私たちは知っているのではないだろうか。便利さはせわしなさも同時に生み出している。でももうこの便利さを手放すことができないということも、知っていて、だから自分を正当化するために、便利な世の中だから生きやすいに決まってるじゃんと思いこもうとして、気持ちにひずみが生まれる。悪循環。

 

なんだか、思春期みたいなことを書いてしまったけど、この冷酷な便利社会に対抗する武器として、私たちは哲学を持つべきだと思う。

ペーテル・エクベリ『自分で考えよう 世界を知るための哲学入門』を読んでわかったのは、哲学って、立ち止まってゆっくりと考えることなんだということである。答えの出ないようなもやもやとした難しいことを、納得のいくまで、時間をかけて、ひたすら考える。時には他の人と理性をもって議論を重ねながら。

便利さの対極にあるようなこういう営み=哲学こそが、絶対に私たちには必要だと思います。

 

あと思春期にもね、哲学は必要です。思春期こそ哲学書を浴びるように読み漁るべきだと思う。自分は思春期時代、「哲学」という言葉すら知らない悲しい少年だったので、自分だけの言葉でややこしいことを考えざるをえず、苦労した。悲しかった。今からでも遅くないと思いたいので、大人になってからもこういう入門書みたいのをときどき読みたくなって読むんだけど、この本は面白かったです。